里山を維持するため。「火」が気づかせる、自然を守ること。
枯れた茅の炎は、周辺のヤナギの樹上を超える高さまで燃え上がり。
巨大に広がっていく炎は恐怖が具現化したモンスターの様で。それまで草刈りをしていたわたしたちは手をとめ、何度見ても不思議な光景を、じっくりと見届けていました。
着火準備に入る博物館スタッフ
燃え上がる茅の炎
樹上まで炎がのぼる様子
立ち込める煙の中で一面を見渡す倉持繁夫氏(菅生沼を考える会)
“30cmほどの高さで、500℃~700℃。
地表の温度は少しあがるくらいで、地下はほとんどあがりません。
つまり枯草が燃えているだけで植物の種子や、植物の根にはほとんど影響しないんです。”
次第に炎が細くなり灰色一色の景色の中、研究者たちの声が、聞こえてきました。
温度計の説明をする津田智氏(岐阜大学)
その温度計を持つ小幡和男氏(ミュージアムパーク茨城県自然博物館)
全国的に減少している草原。今回野焼きされた一部のオギ原も手を加えなければ藪になり、鳥類の営巣もできなくなります。暗い藪の中では、昔はあたりまえであった昆虫や植物も姿をあらわしません。野焼きにより、保全されているタチスミレは常総市のホームページでも紹介している大変希少な湿地性植物です。タチスミレ以外にも多種多様な植物たちが芽吹きます。
一方、誰かが悪さをしているわけではありません。私たちが生活の中で使用していた竹や樹木も、用途が見つからなければ放棄され、侵入を拒むジャングルへと変貌してしまいます。もちろん、多様性とは、単一的なものの見方で結論づけられません。夏に渡来し繁殖するサンコウチョウなどの鳥類にとって、暗い林があることは大切ですし、農村周辺のススキやオギは、今は希少となったカヤネズミが葉を利用して巣を作ります。
生き物と人間のくらしは密接につながっています。
菅生沼には、現在300羽を超えるハクチョウが現在越冬期間を過ごしており、沼の厳冬期を象徴するシンボルとして今年も、美しい姿をみせてくれています。菅生沼は、今回の野焼きをはじめ、多くの協力があって自然が保たれています。
1月23日(日)ミュージアムパーク茨城県自然博物館さんと、菅生沼を考える会さんが主催し、たくさんのこの地に住む地元を愛する人たちそして、私たちあすなろの里も参加させていただいた本年度の野焼きは幕を閉じました。貴重な行事を開催していただき誠にありがとうございました。
今後も、あすなろの里は自然博物館さんと協力しながら、菅生沼の環境整備や魅力を伝えていけたら幸いです。
水海道あすなろの里
常総市ホームページ 菅生沼のタチスミレ群落